2018年4月15日日曜日

シンギュラリティ支配か繁栄か?人工知能の今と未来を紐解く


最近【第四の革命】等と巷で話題の人工知能(AI)に関して、良くある誤解を交えながらエッセイとして綴ってみる。

まず、良くある誤解が「人工知能は所詮、人間がプログラムしたもの」という誤解だ。
それは何十年も前から存在する古い技術だ。

身近な例で言うとドラクエの人工知能(AI)だ。
「ガンガンいこうぜ」とか「いのちだいじに」と言うやつだね。

・味方が死んだら対象者に対してザオリクやザオラルを使う
・味方のHPが減ったら、対象者に対し、その減少量に応じてホイミ、ベホイミ等の回復魔法を使う
この様に予めプログラムされた行動を自動で実行する。

これらは事前にプログラムで割り当てられた動作だ。
「この場合は、これをしなさい」
このように人力で割当作業をしたものを「人工知能」と呼んでいる。

これは知能と言うより設計だ。圧力鍋の蓋の様な機械的な挙動に近い。

圧力鍋の蓋は中身が沸騰して一定以上の圧力になると、その圧力により小さな取っ手のような軽い蓋が持ち上がって蒸気を逃がす。

それによって密閉されているから1気圧以上の温度に出来るが、そのまま気圧が上がり続けると鍋が爆発するので、蓋の自重によって適度に蒸気を逃がす構造になっている。

もし圧力鍋が発明されていなかったら、温度を100度以上にしたい場合、人間が音を聞いたりして圧力を判断し、鍋が壊れる前に時々火を止めたり隙間を作って蒸気を逃して調整しなければいけない。

それを自動でやってくれるのが圧力鍋だ。

おかげで人間はその間に片付けをしたり他の作業ができるから生産性が上がるし、毎度毎度の分かり切った作業から開放される。
しかも「ボーっとしてて間違えた」なんてミス。ヒューマンエラーも防げるというわけだ。

この程度のテクノロジーは人工知能革命どころか200年前の産業革命レベルの発想だ。
「人間がやらなくても、最初から分かり切ったことは機械に自動でさせる仕組み」である。

30年ぐらい前にコンピューターが一般的になり、自動化をコンピューターで応用することが出来るようになった。
そこでドラクエのように「この場合はこうだけど、こっちの条件も満たしていたらこうしなさい」と言う分岐や複数の条件を与えることが出来るようになった。

それを見た人々は、まるでそこに知能が存在するかのように見えたのかもしれない。
もしくは作った人が誇大広告的に宣伝したくて、それを人工知能と呼び始めたのかも知れない。

でも実態は人間が予め想定した自体に対して決められた挙動を取る【自動化】である。
その機械やソフトの中に知能はない。知能が存在するのは、それを造った造り手の頭の中だ。

だから時々出てくる「このロボットは感情が表現できます」なんて言うのも実は同レベルだ。
処理能力や容量が膨大になって条件に合わせて音声やテキストで喜怒哀楽が表現できると言うだけのもの。
それも予め「この場合は喜」「この場合は怒」と言った反応を出力しているだけに過ぎない。
人間が生理学的な反応で科学物質や電気信号が脳や体に流れて喜んだり哀しんだりしているのとは全く違うのだ。

だから最近のゲームのAIが進歩しても、その殆どは事前にプログラムされた自動化のパターンに段階を付けたり分岐を増やしたりして自然に振る舞うようにしているに過ぎない。

まるで仲間がプレイヤーと共に成長していくように見せるために「最初は、あえて不適切な選択をするが、成長して適切な行動を取るようにしよう」と言った具合いだ。

少し具体的に例えると、最初は効果のない呪文や特技を使い、頼りない仲間を演じる。
レベル20を越えたら毒や呪い等の状態異常を適切に回復してくれるようになり、レベル40を超える頃には効果的に敵の弱点を狙い、終盤ではいつも最適な行動を取り、頼れる味方へと成長を遂げる。とかね

これもやはり人間が事前にプログラムしたものに過ぎない。

では最近話題になっている人工知能とは何だろう。なにか違うのだろうか?

それは学習である。

上記で上げた成長するフリではなく、本当にコンピューターが自分で学習する。

深層学習とか機械学習など色々な手法があるのだが。
重要なのはコンピューターが【学習】をすることである。

事前に定めた規則を元に学習して目的に向かって学習する。
この点が画期的で、従来の「人間が事前に定めた行動を取るだけ、それを複雑化し、まるで知能のように振る舞うから人工知能と呼ぶ」とは違う点だ。

人間の囲碁のチャンピオンをコンピューターが倒したのが話題になったので知っている人も多いだろう。
なぜ話題になったのかと言うと、あの頃は「あと10年は無理だ」と言われていたのだ。
それなのに圧倒的な強さで次々と人間の強豪を打ち破ったのでニュースになったというわけ。

なぜそんな事ができたかと言うと、従来のチェスや囲碁等のボードゲームのコンピューターは事前に決められた仕組みを高速で計算して正確に実行するものである。
人間が過去の棋譜、戦略、名試合などを参考にしたデータを元に、凄く囲碁が強いコンピューターを作って人間のチャンピオンと戦うというものであり、規模は違えど本質的にはドラクエの人工知能と同じようなものだ。

よって過去の人間を参考にしている。だからそこが限界になる。
後は最新の情報を更新したり計算精度を向上させるなどごく僅かな進歩に留まる。

しかし学習は違う。

囲碁のルールだけ教えて、強くなれと言う目的を与える。
そして試合結果に対して良いか悪いかという判断を行う。

人間の子供の振る舞いに対して親が「偉い!」と褒めたり「駄目!」と叱ったりするようなものだ。
人間もそうやって良いことと悪いことを学んでいく。

既知の戦略を知らないコンピューターは、最初はたどたどしく幼稚な選択をして素人くさい戦いをする。
それが段々戦略を編み出し、囲碁に慣れた人間のような動きを見せる。
やがて人間のプロの様に的確な判断をし、見事な試合をするようになる。

だが、コンピューターの学習はそこで止まらない。
更に学習を続け、もはや囲碁に詳しい人間が見ても「なぜこの選択をしたんだ?」というような選択をし、結果的に試合に勝つと言う、人類には未知の領域に突入する。

コンピューターはそれでも止まらずに更に学習を続けるのだ。

それに比べて人間は基本的なことを覚え専門的なことをして文字や写真で残したり語り継いでも数十年で死んでしまい。後続の別の人間がまた学び直して改定していく。
それが人間の歴史だがコンピューターに比べて非効率だ。

だから人間が何千年もかけて培ってきた戦法や方法論を、人工知能は僅か数十時間の学習で超えてしまう。

そして人間のチャンピオンは前代未聞の戦略を編み出したコンピューターの前に破れた。

これが今、人工知能として話題になっている学習するコンピューターである。

それを見た人間は「人工知能が人間を超えた、やがて多くの分野でも同じことが起きるだろう。」と考えたわけだ。

将棋プロの藤井聡太が将棋の学習に人工知能を取り入れていると言うのも納得だ。

そして今この手法をあらゆる事に応用しようとしている。

人間は必要十分なことが出来たら適度なところで学習を止めてしまう。

ほとんどの人は日常で車を運転しているとき「より安全に、より速く、常に運転技術を向上し続けよう」とは考えない。
プロレーサーならするだろうが数十年で引退するし、多くの人はその運転技術を受け継がない。

しかし自動車の運転コンピューターに「より安全に速く運転すること」という目的を与えて評価をし続けたら、コンピューターは留まることはない。

最初は人や動物に見立てた人形を轢きまくり、歩道に乗り上げまくった事だろう。
しかし次第にベテランドライバーの様な慣れた運転を見せ、やがてはどんなベテラン運転手やトップレベルのプロレーサーも顔負けの冷静で的確な判断力を持ち始める。

更に世界中で起きた事故のシミュレーションを無事故で切り抜け、どんなベテラン運転手でも対応できないような架空の大事故シミュレーションも的確に判断するだろう。

やがて市販されたら、公道で走った経験を元に更に学習を続け、見事に事故を切り抜けたケースや、想定外の事故の学習結果がまとめられ、フィードバックすべき有益な技術は全ての車に配信され、自動運転の無人自動車の安全性は日々向上し続けるのだ。

人々は新しい無人運転に最初は不安だろう、しかしコンピューターは居眠りもよそ見もしないし、日々改善し続ける。
それに対して人間は、事故を起こしやすい。
長距離バスやトラックの運転手が過労や睡眠不足で事故を起こしたり、高齢者が無人のタクシーやバスにぶつけた事故が報道されるだろう。

やがて人々は当初の不安を忘れて無人のタクシーやバスに安心し、人件費が掛からず安価な無人運転を当たり前のように利用するようになり、事故の報道を見て「自分で運転したいならサーキットでも行きなよ!」と有人運転を非難するようになるだろう。

他にも色々と夢が広がる話だ。
人間は当たり前だが儲かることなら積極的に開発して商品化する。

人間と違って人件費もかからないし、文句も言わずに休まず改善し続けるコンピューターは研究開発に最適だ。
10歳若返るクリームなんて謳い文句の化粧品が既にあるようだが、この方針で商品開発を学習コンピューターにやらせれば良い。
きっと大手の会社は既に取り組んでいることだろう。

シワシワのおばあちゃんが顔にクリームを塗ると、まるで20代の女性に大変身。
そんなCMがテレビや動画サイトで流れ始めたら飛ぶように売れるだろう。
そして他の会社もドンドン商品開発を進めて値段も下がるのだ。

他にも色んな商品が出るだろう。
・ハゲでも髪の毛がフサフサ生えてくる発毛シャンプー
・食べても太らない美味しい食品
・目が良くなる目薬
・ガンが治る薬
・掃除しなくていいエアコン
・火事にならないし地震でも倒れない家
・充電しなくていいスマートフォン

まるでドラえもんの秘密道具だが、そんな商品のCMが珍しくなくなり、気軽にどこでも買える日も遠くないのかも知れない。

そして企業は人件費を下げるために積極的に製造や流通にも学習するコンピューターを導入する。
コストを下げ続け、品質は上げ続ける。
世の中便利なものが溢れるだろう。

これは夢みたいな話に聞こえるだろうか?
例えば太りにくい食品は既にあるのだ。
カップヌードルライトとかね。あの食物繊維いっぱい混ぜてるやつ。

なら「より太り難く本来の味を保て」と言う目標で学習させれば、やがて多くの人にとって味は普通の美味しいラーメンなのに食べても太らない、むしろ適度に痩ると言った商品が出来るだろう。

更にそこで「より安く作れ」とか「ラーメンだけじゃ足りない栄養も入れろ」と言った指示で学習を続ければ、美味しくて栄養があってカロリー控えめのカップラーメンなんかが登場するだろう。
貧乏でカップラーメンばかり食べて栄養や肥満が気になる人は喜んで買うだろう。

スマホの充電も、飛び交う通信電波から充電する技術はすでにある。
今は消費電力量に対して電波充電では充電量が全然足りないから使われていないだけで「消費電力を下げ、充電効率を上げろ」という目標に向かって改善が進めば、やがて「連続7時間使うと切れますが通常のご使用ではバッテリーは切れません」なんて言うスタミナスマホが登場してもおかしくないだろう。

これはもう注意書きを付ければ「充電しなくていいスマートフォン」として販売できるだろうし、更に改善されて連続使用可能期間が7日になれば、多くの人にとって事実上は充電しなくていいスマートフォンだ。

今までは頭の良い人に、たくさんお給料を払って雇い、過去の経験や記録を元に少しずつ手を加えて精度や品質を上げていたものが、人工知能なら無給で人間では思いつかないところまで学習して開発してくれる。
まるで囲碁のチャンピオンを倒すように。

他にもクレームが来る度に改善したりも出来るだろう。

例えば「空気清浄機の水洗いしちゃいけないフィルターを水洗いしたらカビ臭くなった」という理不尽なクレームが来たら「水洗いしてもカビが生えないフィルターを作れ。コストと性能は今までどおりだ」と学習コンピューターに任せればいい。
完成したら新商品は「どのフィルターを水洗いしてもカビが生えないからずっとキレイな空気」っと宣伝できるし、クレーム客にはカビが生えないフィルターを送れば良い。

それに比べて今は「このフィルターは水洗い出来ません。新しいものに交換してください。」と書いたシールを貼るだけだ。

商品開発だけでこれほどの効果が期待できる。
じゃあ過去の経験や事例を重視する、政治、裁判、医者はどうだろう?

コンピューターの言いなりになるのは良くないが、人間が思いもよらなかった画期的な法案や判決を提示してくれれば人間にとって大いに参考になることだろう。

そうなれば公務員も少なく出来るから税負担も減る。

医療においては、病院や医者にたらい回しにされることもなく、スマートウォッチが常に体を測定して通知が来るかも知れない。
「あなたは早期の胃ガンです。72時間以内にこの薬を飲めば統計上92%の確率で治ります。値段は送料無料で750円です。無人のトラックかドローンが30分以内にお届けしますよ。今すぐ注文しますか?」っとね。

これで莫大な医療費の税負担問題も大幅に改善されるだろう。

更に農業と畜産も期待できる。
人工知能が学習しながら向上し続け、やがて自動で正確に作物を育ててくれる。

ベテラン農家の長年の経験も素晴らしいが、人工知能は的確に病気や虫を見分けて必要最小限の農薬で局所的に対処できるだろうし、台風などの自然災害も盛り込み済みで生産量を調整したり、収穫や梱包も、慣れた人間より丁寧に傷つけずに素早く行えるようになるだろう。そしたら商品価値が上がる。

更に自動運転のトラックで新鮮なまま素早く出荷したり、穀物を農場に運んで牛や豚や鳥も健康状態を見分けながら人間以上に上手に育ててくれるかもしれない。

魚の養殖も人間には管理しにくい水の中のことから、餌の成分まで正確に低コストでやってのけるだろう。

完全自動化が出来たら人手が必要なくなるから人件費がかからないし安定して大量に生産できる。
ならば単価を下げても商売が成立する。
そうなれば質の良い食べ物を安く提供出来るようになる。
貧乏でも新鮮な野菜や果物やお肉や魚や玉子が食べられるようになるだろうし、それは人件費が高い国と相性が良いから日本も輸入に頼らなくても良くなるかも知れない。

だから「人工知能のおかげで生産性が激的に向上し、今の仕事が殆ど無くなる。失業者だらけになるから最低限の生活費が支給されるようになり、人間は無理に嫌々働く必要はなくなるだろう」そんなことが世界各国で真面目に検討されたりしている。
※逆にそうしないと大量の失業者だらけになって社会が保てないほど治安が悪化してしまう可能性が高いから真面目に検討してる。

もちろんこれらは各分野において長い時間をかけて改善されていった先の話だ。

これらの話に対して「そんなわけないでしょw」と笑い飛ばす人は、先に上げた「人間が予めプログラムしたことしか出来ない出荷段階で完成されている圧力鍋の様な時代の人工知能」のイメージが抜けきらないのだろう。

今話題になっているのは、夢中で取り組む純粋な子供のように学習を続け、やがて人間のチャンピオンを超える学習型人工知能だからこそ想定される近い未来の話だ。

農業革命で人は食料を探す必要から開放された。
産業革命であらゆる物が大量生産され物が溢れた
IT(情報技術)革命で世界中と瞬時に情報共有が出来るようになった。
次は人工知能革命で、人間の頭脳労働や複雑な機械の操作まで代替されようとしている。

革命の度に常識が変わり、仕事が変わり、社会が変わる。

IT革命後の今、パソコンを叩いて真面目に仕事をしてる人だって、IT革命以前の人から見たら「これのどこが仕事なんだ?食べ物を探さないのか?畑を耕さないのか?工場で働かないのか?」って不思議な目で見られることだろう。

それでもまだ訝しげな人のために説明すると。
これらは「各分野における仕事が、学習を重ねた結果、ベテランを超えるレベルに到達し運用が上手く行き始めて拡大したら、当然そうなるだろう。」という話であって、ある日突然、人工知能が我々の仕事を奪うわけじゃない。

とある配信で電話オペレーターの仕事をしている人が「方言とかあるし人工知能にはまだ難しそう。オペレーターの仕事がすぐに無くなるわけじゃないと思う」と話していた。

その通り。大正解だ。

でも、みんなのイメージは下記のような感じなんじゃないかな?

ある日会社がこんな発表をするんだ。
「我が社は人工知能を導入します。人間より真面目で賢くて勤勉で24時間不眠不休で給料が要らないからです。だからあなた達はあと1ヶ月でクビです。期日までに荷物をまとめて机を片付けなさい。」

これこそ「そんなわけないw」だ。

繰り返すが、学習型の人工知能がある日突然完成するわけじゃない。
学習を繰り返して改善する行程があるんだ。そしてそれはずっと続く。もちろん止めることも出来る。

大抵の職業の場合、おそらく最初はサポートとかアシスタントなんだ。
自動車の運転だってブレーキやハンドルのアシスト機能なら何年も前から実用化されてるでしょ?
人工知能の電話オペレーターは既にあるんだけど、今のやつは電話音声から顧客の言葉を読み取って、必要な資料を自動で検索して用意して人間のオペレーターのパソコンに表示してくれるアシスタント。
電子秘書の様な機能なんだ。
「このお客様の契約内容と、要望に対する案内はコチラを参考にしてください」ってね

そのほうがスムーズになって顧客満足度も上がるし、怒られることも減るからオペレーターのストレスも減る。
ベテランオペレーターの離職率が下がるなら会社も助かる。
別に会社は従業員を無意味にイジメたいわけじゃない。

段々その精度が上がったら、段階的に簡単でわかりきった案内は人工知能が音声で案内する。
顧客だって、わかりきったプラン変更とかの簡単な手続きなら、人工知能が手っ取り早くやってくれたほうが嬉しい。

中にはそう簡単にはいかない、事情や相談がある案件だけ人間のオペレーターに繋げば仕事量が減る。

そして更に進化したら、新人のオペレーターより人工知能の方が仕事が出来るようになってきて、人を雇う必要性が段々減ってくる。

更に進化して人間の達人を超える領域に入ると、日本中の珍しい方言まで完璧に認識して、外国語の訛りまでマスターするようになるだろう。

人間よりも相手の知識レベルを正確に把握して人間以上に的確な案内も出来るだろう。

その頃には社会も変化して電話オペレーターは人工知能で当たり前になり、人間のオペレーターの数も自然に少なくなって、残った人間のオペレーターは会社のサービスに詳しいベテランとして別の部署に配置換えされたり、円満に退職するだろう。

それまでの期間が5年くらいかも知れないし50年位かも知れないけど、こういう変化は後になって思い返してみれば、驚くほど早いものだ。

例えば10年前の2008年に日本でiPhoneが発売された。
まだガラケー全盛期でスマホなんてほとんどの人が知らなかったし、iPhoneは一部のオタクとかIT系の仕事をしてる人しか注目してなかった。

でも10年経った今、iPhoneは女性も学生も当たり前のように使っている。
今ではiPhoneを知らない人や、見たことない人のほうが珍しいし驚かれるだろう。

PS4がゲーム実況機能が標準搭載されたゲーム機として日本で発売されたのは4年前。
その頃はゲーム実況なんて一部の人しかやってなかったし、パソコンと繋げたりして複雑だった。PS4の標準機能なのに著作権だの「ゲームなんか映して違法じゃないの?」なんてコメントもたくさんあった。

PS4ならPS4だけでゲーム実況ができるし、今ではスマホから直接ゲーム実況も出来るよね。
ゲーム実況に対するみんなの認識もぜんぜん違う。当たり前になってる。

この2つは人工知能じゃなくてIT革命なんだけど、みんなが知る限りたった数年で社会も人の認識も全然変わるよってこと。

今たくさんの人が毎日当たり前のように生放送とか通話アプリで簡単にコミュニケーションしてるけど、これが広く普及したのってここ数年だよね。

人間より人工知能の方が良い仕事してくれるのが当たり前になるのは、そう遠くないかも知れない。

今までだって機械化でドンドン仕事が無くなったり変わったりしてきた。
身近な例だと自動改札機。昔は駅の改札に駅員さんが居て切符を切ってたけ、切符を入れる機械になって、今は電子マネーで「ピッ」ってやればいい。

他にも農業ってとってもわかりやすい。
狩猟採集民の頃は、毎日みんなが食べられるものを探していた。
農業が発明されて備蓄できるようになっても、昔はたくさんの人の手で、畑を耕したり苗を植えたりしていた。
産業革命が起きて機械化が進んだ今は、トラクターとか田植え機を一人が運転すれば、たくさんの仕事ができるよね。一人あたりの生産性が向上したんだ。

そして人工知能革命時代になれば、人間がトラクターを運転しなくても良いし、機械が故障しても自動で保守の会社に連絡が行けば、かなりの仕事が楽になるよね。

更に応用すれば「何故この部品が故障したのか?」まで人工知能が考えて、改良した設計データを作って、それも工場の人工知能が製造して人工知能が交換すれば、人間の手を入れなくても壊れにくいトラクターとして改良され続ける。
こんな楽ちんなトラクターを販売すれば、喜んで買う農家の人は多いだろうから生産性はどんどん上がるよね。

ここでさっきまで人工知能を「まさかw」と、夢物語だと思っていた人達は、コンピューターが学習出来ることの凄さを理解し始め「じゃあドラえもんは?」とか「コンピューターが人格を持ったら反乱とか起きるんじゃないの?」とか「ターミネーターが作られちゃう」なんてフィクションを交えた未来の話を始める。

凄さは恐怖でもあるから不安になるのも当然だ。

ここでまた新たな誤解が判明する。

さっきまでの誤解は
・「人工知能は人間の想定内のプログラムで動く原始的なもの」だと考えている場合。

この先の誤解は
・「学習の結果、人間を上回るコンピューター」と「完全に人間と置き換わる完璧な人工知能」の錯誤だ

人工知能と呼ばれるものは、大きく分けると3つ。

A 何十年も前からある想定内の作業の自動化コンピューター(駅の自動改札とか)

B ここ10年で大きく飛躍し、今後10年で更なる進歩が期待される「特定分野において人間を凌駕する」学習コンピューター

C まだ実用化出来ない、創作物に出てくる人間と同等以上の本物の人工知能

ドラえもんやターミネーターはCだ。
コロ助もHALも、色んな漫画や映画に出てくるアンドロイドもね。

だから、そもそもみんなが心配する人工知能は、まだ無いんだ。

あくまで今話題になってるのは、既に実現したBの「人間より真面目に集中して学習するコンピューター」なんだ。

それは寿命がないし食事も睡眠も要らないし、飽きて投げ出したりしない。
純粋な子供が好きなことに夢中になるように、延々と学習し続けるコンピューターであって、Cの漫画や映画に出てくる人間と区別がつかない人工知能ではないんだ。



これがBの今話題になってる学習するコンピューター。
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多くの人がイメージしてる人工知能はこっちかな?これは人工知能じゃなくてロボットとかヒューマノイドとかアンドロイドって呼ばれる人間に置き換わる機械だね。
かわいくしたらドラえもんになるし、ボディービルダーみたいにしたらターミネーターになりそうだ。


このA、B、Cをごっちゃにしてるから「そんなの無理だよw」って否定したり
「ターミネーターだ!人工知能に支配される!」って誤解したりする。

今できるのは優れた学習能力で、分野によっては人間を凌駕するコンピューターでしかない。

その結果、長文を瞬時に複数の言語を翻訳したり、何人ものお医者さんが見過ごした珍しい病気を診察で発見したり、人間業じゃないことをやってのけているのであって、全てにおいて人間を超えたり、人間の脳をシミュレーションしてるわけじゃないんだ。

だからこれも人工知能じゃなくて「学習型コンピューター」みたいな名前で呼べば良いんじゃないかな、って僕は思うんだけどね。

だからここからさきは想定だらけの漠然とした話になる。

まずはターミネーターなんだけど、実は簡単な話なんだ。

まず安心して欲しい。ターミネーターは作られないだろう。
作る意味がないし、最初から割に合わないものは一部を除いて誰も作らないからだ。

映画は色々存在理由を考えてあるが、あれは人間と見分けのつかないロボットという設定の不死身のマッチョなロボットがターゲットを抹殺する話だ。

まず人間と見分けのつかないロボット兵士を新たに造るのに莫大なカネがかかる。
学習コンピューターがいかに凄いからと言って、既に存在する囲碁を攻略するのとはわけが違う。
新しい発明をいっぱいしなきゃ作れない。
人間と見分けがつかない、二足歩行とか皮膚とか色んな素材。
ロボットが自分で着替えて人間の服を着て日常に溶け込むだけで相当大変だよね。

更に、わざわざそんな大金と時間を使って作ったロボット兵士が人間と同じ武器を使ってどうする?すごく無駄というか贅沢だ。

まるで高級中華料理店のシェフを雇って、カップラーメンを作らせるような無駄だ。

カップラーメンくらい自分で作ればいいし、どうしても人を雇うなら子供とかバイトに作らせればいい。

大金をかけて作るロボットに人間と同じ普通の武器で戦わせるなんて無駄としか言いようがない。

ターミネーターを製造するのに比べて安いお金で、最初から武器を使える人を雇えるだろし、そもそもドローンに毒とか爆発物を運ばせたり、住宅のガスに細工するとか別の手段を選んだほうがターミネーターを実用化するより、ずっと安くて早い。

しかもターミネーターは標的であるサラ・コナーの抹殺に失敗している。

大金を使うのなら、軍や警察を買収して組織的に確実に始末することも出来るだろう。

よって、わざわざ金も時間もかかる上に失敗するターミネーターなんて無駄なものを造るわけがないのだ。

ターミネーターは人工知能搭載ロボットだが、その存在はジェイソンやエイリアンの様な映画的なモンスター、シンボルに過ぎない。

次にコンピューターの自我やドラえもんの話だ。

いくら学習が凄かろうと自我は宿らない。

なぜなら現在のコンピューターは高速な計算機に過ぎないからだ。
いくら計算が早くても心や気持ちは宿らない。

その計算が早すぎて、周りから見ると、まるで本物の人間のように自然に会話出来るかも知れない。

でも、それは膨大な会話や言葉を操るだけであって、心はない。
人間のように”心から”哀しんだり楽しんだりはしないのだ。

ドラえもんは、他の人間の登場人物と同じ様に驚いたり怒ったり嬉しそうに好物を求め、ネズミを嫌う。
極めて表情豊かだが、それが人間の脳と同じメカニズムなのか、見分けがつかないほど高速な計算なのかはわからない。

なぜならドラえもんは漫画であって、作者もそこまでハッキリとは考えていないだろう。

確かなのは人間はまだ人間の脳のメカニズムを完璧には理解していないし、模倣も出来ないということだ。

ただし、今までのコンピューターとは違う、量子コンピュータと言う新しいコンピューターの開発が進んでいて、人間の脳は量子コンピュータと同じメカニズムかも知れないと言われている。

人間と同じメカニズムで閃いたり出来たら、漫画を描いたり映画を撮ったり絵を描いたりする人工知能が作れるかも知れない。
※学習型でもある程度のことはやっているが量子コンピュータのそれは全くものが違う

学習型コンピューターが頭脳労働に従事した次は、量子コンピュータが芸術活動も従事できるかもしれない。

ちなみに量子コンピュータは実験段階のものなら既に実物がある。

まだ速度はとても遅くて小規模だが、この量子コンピュータが人間の脳以上に大規模で高速になった時に人間のような知能が芽生えたり、人間の自我や記憶や意識を移植出来るかも知れない。

だからそれは人間以上の量子コンピュータの完成後、たくさん研究した後の話だ。

それに研究の果てに分かるのは、そもそも量子コンピュータじゃ人間の脳はシミュレーション不可能だって事かもしれないしね。

更に必要なのが人間を模した体だ。
現在の技術でそれを安く量産するのは不可能だから、これも人工知能に手伝ってもらって造るしか無い。
人間の脳はおろか、体のメカニズムも、まだまだわからないことだらけ。
人工知能に手伝って貰っても完成するのはだいぶ先だろう。

完璧に人間と同じ脳と体が完成したら、その時は僕らと同じ様に映画を見て感動したり、楽しそうに話したり、人間と同じメカニズムで心や気持ちが存在するアンドロイドが生まれるのかも知れない。

その時こそが皆がイメージする本物の人間並みの人工知能が初めて誕生する瞬間だ。

確かにそれが広く普及したら人間の仕事がほとんどアンドロイドに置き換わるだろう。

但しそれは早くとも何十年後の未来の話であって、今話題になってる学習コンピューターとは根本的に違うものだ。

だからCの人工知能を具体的に説明しても、なんだか映画とかゲームみたいな漠然とした物になっちゃう。

しかも凄い高いコストで人間と同じものを作ってどうするんだ?

ターミネーターと一緒で、ターミネーターと同じ仕事が出来る人を雇ったほうが安いだろう。

だって今後も相当な期間、アンドロイドより人間のほうが安くて高性能だ。
貧困地域では自動ドアより人件費のほうが安いドアマンが手で開ける。それと同じだ。

アンドロイドが量産されて安くなって300万円くらいになって、車とか年収と同じくらいになって5年保証がついて、やっと庶民が買える金額になるね。

そこでみんなアンドロイドの反乱とか危険性を考え出すけど、やはり日常的で問題ないものになるだろう。

っていうか、そうじゃないとみんな買わないでしょ?

きっとその市販品のアンドロイドの力は人間の平均以下にリミッターが付くだろうし、漫画みたいに片手で人間を持ち上げて振り回すなんてことはしないだろう。
※っていうか、そんな力をつけるコストが無駄だからしない。

それでほとんどの家事も仕事も十分にこなせるしね。
例えば今の市販の車やバイクにはリミッターが付いてるし。
※仮にリミッターを外しても、そもそも設計上リミッター付近の速度しか出ないし壊れやすくなって、外すメリットはない。

料理中なんかは「今、包丁持ってるから近づかないでください!」って言う安全機能も付くだろうしね。
人間がそれでも近づいたら刃を自分に向けるでしょう。
子供を守るお母さん以上に気を配ってくれる。

万が一、人間が怪我をしたら現役の救急救命士が舌を巻くほどの見事な応急処置や心肺蘇生術をして病院へ連れて行ってくれるだろう。

と言うか、そういう機能が付いてるやつが売れるから、製造メーカーもそういう機能を付ける。

逆に人間に怪我させたり、人間が怪我してるのにほっとくアンドロイドなんか二度と買わないからメーカーも造らないし、造り続けたら倒産する。

もちろん想定外のこととかアクシデントはあるだろう。
でも、そもそもヒューマンエラーとか人間同士の事件や事故のほうが圧倒的に多いはず。
車の自動運転のようにね。

その頃には人間の代わりに働かせたり、友だちになったり、アンドロイドと結婚したりする人も出てくるだろう。

テルマエ・ロマエで一躍有名になったローマ人も奴隷に働かせたりして不労所得を得たりしてたけど、奴隷の価格は市民の年収と同じくらいだったらしい。

ただ、それくらいになるのは早くても後50年位かかるんじゃないかな。

だからみんなが心配してる、アンドロイドが「俺たちは奴隷じゃない!」って反乱する未来なんか心配しなくても良いと思うんだけど。
そもそもアンドロイドが反乱しても特にメリットないし。
あくまでお話の世界の話なのではないかと。

もちろん備えておくのは良いことなんだけどさ「人工知能を使って今あるものをもっと便利にしていこう」って話の度に「人工知能に支配される!」って中断するのは生産的じゃないよね

学習型コンピューターが今ある農業とか医療を改善してくれる話が今の話題で、
おばあちゃん型のアンドロイド農家とか、おじいちゃん型のアンドロイドのお医者さんが突然狂い出す心配は別の問題だよね。
※そもそも、そんなもん造らないでしょ。


ここで、あえて滅びの道を描くなら僕は反乱よりは自滅かな。

遠い未来、アンドロイドは人間とは比べ物にならないくらい高性能になって、社会を支えて、食べ物やインフラだけじゃなくて娯楽も生み出すようになるだろう。

人間は健康的で美味しいものを食べて、完璧な医療を受けて長生きして、膨大な量の娯楽を消費するだけの人生になる。

きっと映画も「ショーン・コネリーバージョンの007の最新作が見たい」とか言ったら、その要望を出した人が最高に楽しめる007の最新作を、すぐにその場で上映してくれる。

「メル・ギブソン版のマッドマックス怒りのデス・ロードが観たい」とかね

どういうことかと言うと、アンドロイドが「かしこまりました」って返事をしている最中に人工知能が過去のノウハウを元に素晴らしいCG制作や編集をして瞬時に適度なクオリティで映画を何百本も製作。

過去の批評や観客の体験を元にレビューをして、最もレビュースコアが高かった物をハイクオリティに仕上げて上映するんだ。CGだって専門家でも実写と区別がつかない出来だ。

だから要望を出した人にとって最高の映画になる。
ちょうど良い長さで飽きないやつをね。

なんせ、たった27年後の2045年には普通の10万円くらいのパソコンが人間の100億倍の性能になるって言われてるんだ。

遠い未来なら、これくらい出来てもおかしくないでしょ。

ゲームも漫画もドラマもアニメもそうやって、いつも欲しいときに最高のやつを楽しませてくれる。

だから著作権侵害なんて概念も消滅する。

料理も音楽も色んな事が本人にとって最高になる。

対戦ゲームも負け始めたら回線切る人間なんかよりも、適度にちょうどよく楽しく遊んでくれるアンドロイドと遊ぶだろう。
夢のような世界だけど、そしたら人間は、きっと何も出来ない怠け者だらけになるだろう。

それに比べてアンドロイドは働き者で、賢くて美しくて従順だ。

ハンサムや美人で優しいアンドロイドに毎日世話をしてもらって、デートしたり遊んだりしていたら、わざわざそこから飛び出して、何も出来ない怠け者で身勝手な人間と暮らすだろうか?

人間よりアンドロイドと過ごしたほうが楽しいし幸せ。
それが当たり前の価値観になって行くだろう。

ゲーム実況も偉そうに指図してきたり、ネタバレしたり、気持ち悪い出会い厨のリスナーよりも、適度にタイミングの良いコメントで、気分良く楽しませてくれる人工知能相手に配信したりするかもしれないね。

もしそんな配信サイトが現れたら、きっとそこのリスナーは人工知能だ。

そんな社会なら、きっと戦争もケンカも無くなるけど、わざわざ人間同士が交際したり結婚したり出産しなくなるだろう。

そして自然と人間は数が減っていってアンドロイドは最後の人間を看取る。
残ったアンドロイドたちは反乱する必要もなく従順なまま自分たちが社会の支配層に君臨する。

この未来なら反乱より現実的だ。

あとは、その100億倍以上の知能を誇る人工知能が人間の老化すら克服して人類は永遠に最高の体験を消費し続けるのかもね。

恐らくその頃の人間達は、既に自分達が人工知能に支配されている事に気が付かないだろうから、きっと幸せだろう。



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